2026年5月30日、ソウル — 韓国政府は5月29日、家計・産業・先端投資の3層に及ぶ経済活性化パッケージを同じ日に発表しました。具体的には、金融委員会と韓国資産管理公社(KAMCO)が運用する「セドヤク(新跳躍)基金」が9602億ウォン規模の長期延滞債権を第5回として買い取り、産業通商部は海外工場の国内回帰を促す「Uターン」制度を全面的に再設計し、国民成長ファンドは国産AI半導体企業フリオサAIに3700億ウォンを直接投資するなど計5件の資金支援を承認しました。李在明政権が発足1年を迎えた週に同時公表されたこのパッケージは、「景気下支え」を一時的な対策ではなく、家計から産業まで貫通する恒常的な制度として組み込む意図がはっきり読み取れる内容です。
1) セドヤク基金 第5回買取 — 11万6000人・9602億ウォン、累計75万人
金融委員会は5月29日、セドヤク基金の第5回債権買取の結果を公表しました。買取対象は7年以上延滞している5000万ウォン以下の個人無担保債権で、今回1回分だけで約11万6000人、9602億ウォン規模に達します。制度開始からの累計受益者は75万人に乗り、買い取りが完了した時点で取り立ては即時停止されます。さらに、基礎生活受給者などの社会的弱者の債務は別途の返済能力審査なしに償却されます。今回特に重要なのは、農協系の農業資産管理会社、相互金融(マウル金庫・水協・信協・森林組合)、貸金業者、公共機関が保有する債権までを買取対象に含めた点です。これにより、地方在住・高齢層・農村部の延滞債務者まで救済の傘が広がりました。
規模感としては、韓国の信用回復委員会の個人債務調整申請は年間14万〜15万件前後で、累計75万人という数字は通常チャネルでは数年分に相当する救済件数を「政府による直接買取+償却」という強い手段で処理してきたことを意味します。単純な返済猶予ではなく、法的に債権を消滅させる方向であるため、家計の信用回復スピードは従来の任意整理や法的回生より大幅に速くなる構造です。
2) 海外工場「Uターン」制度の全面再設計
同じ29日、ク・ユンチョル副総理兼財政経済部長官の主宰で開かれた経済関係長官会議で、産業通商部は「国内回帰(Uターン)再定立および促進方策」を発表しました。発表文は背景を明確に示しています。「グローバル保護貿易主義の強化、供給網再編など対外環境の変化に対応する」ためで、海外事業所の単純な国内移転にとどまらず、地方投資の活性化と先端戦略分野における国内能力の確保を中核の国政課題として明示しました。
具体的な4本柱は次の通りです。①Uターン認定範囲の再設計(先端戦略分野のR&Dや生産拠点まで対象拡大)、②補助金体系の再編(施設投資比率中心から地方投資・雇用・技術波及など多次元評価へ)、③評価・管理の強化と履行要件の合理化(段階的履行の認定)、④戦略的誘致と投資履行の密着支援(候補企業の事前選別、敷地・許認可・人材マッチングまで政府が伴走)。米国のIRAやEUのCRMA(重要原材料法)が補助金競争を激化させる中、韓国としても国内補助金が薄ければ先端戦略生産が海外に固定化されかねません。新Uターン制度は単なる雇用政策ではなく産業安全保障の枠組みとして読むのが正確で、地方投資の項目によって地域経済政策とも結びついています。
3) 国民成長ファンド — フリオサAI 3700億ウォン直接投資ほか5件承認
5月28日には金融委員会傘下の国民成長ファンド基金運用審議会が開かれ、3件の第2次メガプロジェクトと2件の一般プロジェクト、合計5件の資金支援が承認されました。中心は国産AI推論半導体企業フリオサAIへの3700億ウォン先端基金直接投資で、国民成長ファンド全体としては関連プログラム合計で約8000億ウォン規模が動員される見込みです。そのほか、次世代バイオ・ワクチン設備建設およびR&D支援、国産AI半導体開発資金が承認され、SKバイオ関連投資も含まれます。
4月の戦略委員会第2回会議で、バイオ・ディスプレイなど早期成果型産業に加えて「主権AIエコシステム拡張プロジェクト」を含む6件の第2次メガプロジェクトが先行選定され、今回はその一部が実弾の資金支援に確定した形です。さらに5月から一般プロジェクト枠も稼働しており、国民成長ファンドの「設計→選定→資金執行」サイクルがようやく実戦運用に入りました。エヌビディアやGoogleが主導するグローバルAIコンピューティング市場で、韓国が半導体・モデル・サービスまでの自国スタックを確保するという宣言を、公的資本が具体的な金額で裏付けた格好です。
パッケージとしての意味
3つの政策は対象こそ異なりますが、共通点は明確です。すべて個別審査依存ではなく制度として自動的に作動する仕組みを拡張しています。セドヤク基金は買取と同時に取り立てを停止し弱者債務を償却する仕組みを定着させ、Uターン制度は多次元評価で補助金を自動配分し、国民成長ファンドは戦略委員会から基金運用審議会までを通じて資本を段階的に投入します。発足1年の節目だからこそ、ヘッドライン的な単発施策ではなく、政策の機械装置そのものを更新する選択をした、というのが今回パッケージの最も重要なメッセージといえます。
出典
- セドヤク基金 第5回買取(9602億ウォン、累計75万人): korea.kr 政策ニュース
- 海外工場Uターン再定立および促進方策: korea.kr 政策ニュース
- 国民成長ファンド フリオサAI・SKバイオなど5件承認: korea.kr 政策ニュース
- 関連: [2026-05-30] 韓国 猛暑警報の18年ぶり改編・特許1か月超高速審査・自営業者の電気料金選択権