世界のロボット市場は2025年に約1,080億ドル規模だったが、2035年には4,160億ドルまで拡大するとの予測がある(Precedence Researchのデータ、Global X引用、2025年12月)。AI計算コストの低下、ヒューマノイドロボットの急速な進化、労働力不足・高齢化・製造業の国内回帰(リショアリング)が成長の触媒とされる。注目すべきは、このテーマETFの地図そのものが大きく変わりつつある点だ。2018年に「iShares Robotics and Artificial Intelligence Multi-Sector ETF(IRBO)」として設定されたファンドは、現在「iShares Future AI & Tech ETF(ARTY)」へとティッカー・ファンド名・追跡指数のすべてが変更されている(StockAnalysisのARTYページで確認 — 旧IRBOのページURLは自動的にARTYページへ転送される、2026年8月3日確認)。純粋なロボットテーマから、AI半導体・コンピューティング中心へと重心が移動した形だ。

本稿では米国上場のロボット・自動化ETF4本 — BOTZ(Global X Robotics & Artificial Intelligence ETF)、ROBO(ROBO Global Robotics & Automation Index ETF)、ARTY(iShares Future AI & Tech ETF、旧IRBO)、ROBT(First Trust Nasdaq Artificial Intelligence and Robotics ETF) — を実際の数値で比較する。韓国上場のロボット・自動化ETF(KODEX K-ロボットアクティブ、TIGERグローバルAI&ロボットなど)との直接比較は、本シリーズの次回で扱う。
1) 一覧比較
| ティッカー | 運用会社 | 追跡指数 | 経費率 | 純資産 | 組入銘柄数 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| BOTZ | Global X | Indxx Global Robotics & AI Thematic Index | 0.68% | 33.1億ドル | 62銘柄 | 産業用ロボット・自動化ハードウェアの大型銘柄に集中 |
| ROBO | ROBO Global(運用: Exchange Traded Concepts) | ROBO Global Robotics & Automation TR Index | 0.95% | 19.4億ドル | 91銘柄 | 階層加重方式で自動化バリューチェーン全体に広く分散 |
| ARTY(旧IRBO) | BlackRock(iShares) | Morningstar Global Artificial Intelligence Select Index | 0.47% | 35.0億ドル | 65銘柄 | 2026年にリブランド、AI半導体・コンピューティング大型株中心へ性格変化 |
| ROBT | First Trust | Nasdaq CTA Artificial Intelligence and Robotics Index | 0.65% | 7.25億ドル | 121銘柄 | Engager/Enabler/Enhancerに分類後、均等加重。最も広い分散 |
2) 手数料の罠 — 経費率だけでは判断できない
経費率は毎年資産から差し引かれる運用コストに過ぎず、売買時に発生する買い気配・売り気配スプレッド(ビッド・アスク・スプレッド)も実質コストに含める必要がある。純資産最大のBOTZは30日中央値スプレッドが0.03%と最も低く、純資産最小のROBTは0.20%と6倍以上開いている。
| ティッカー | 経費率 | 30日中央値ビッド・アスク・スプレッド | 実質コスト体感 |
|---|---|---|---|
| BOTZ | 0.68% | 0.03% | 低い — 純資産33.1億ドル、流動性は最上位クラス |
| ARTY(旧IRBO) | 0.47% | 公式非開示 | 低〜中 — 純資産35.0億ドルで4本中最大、流動性は良好と推測 |
| ROBO | 0.95% | 公式非開示 | 中 — 91銘柄への分散リバランスに伴う回転コストを考慮 |
| ROBT | 0.65% | 0.20% | 中〜高 — 純資産7.25億ドルで4本中最小、スプレッドも最も広い |
ここで日本の投資家にとって見逃せないのは、BOTZの上位3銘柄が国内でもおなじみのキーエンス・ファナックという日本企業である点だ。米国上場ETFを円で買うと為替スプレッドや米国配当への源泉徴収(通常10%、日米租税条約適用後)が発生するが、キーエンスやファナックは東証にも上場しており、日本の証券口座から円建て・NISA成長投資枠の対象として直接保有することも選択肢になる。米国ETF経由でこれらの銘柄に投資する場合と、東証で直接保有する場合とでは、為替スプレッドの発生有無や配当課税の扱い、NISA適用の可否が異なるため、どちらの経路で同じ企業への実質エクスポージャーを取るかは比較検討する価値がある。具体的な税率や制度適用条件は証券会社や税理士に確認してほしい。
3) 組入銘柄の集中度(上位5銘柄)
| 順位 | BOTZ(2026-07-31) | ROBO(2026-08-03) | ARTY 旧IRBO(2026-08-03) | ROBT(2026-07-30) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | キーエンス(日本) 10.59% | イルミナ 1.97% | TSMC(台湾) 5.19% | CCC Intelligent Solutions 1.98% |
| 2 | ABB(スイス) 9.33% | ロックウェル・オートメーション 1.91% | NVIDIA 4.95% | イルミナ 1.93% |
| 3 | ファナック(日本) 9.13% | アンバレラ 1.85% | ブロードコム 4.95% | オーシャニアリング・インターナショナル 1.92% |
| 4 | NVIDIA 8.85% | GEAグループ(ドイツ) 1.80% | AMD 4.85% | クラウドフレア 1.80% |
| 5 | インテュイティブ・サージカル 5.75% | テラダイン 1.70% | マイクロン・テクノロジー 4.34% | パロアルトネットワークス 1.78% |
4) 期間別リターン
| ティッカー | 1年トータルリターン(配当込み) | 設定来年率 | 設定日 |
|---|---|---|---|
| BOTZ | 9.01% | 9.87% | 2016-09-12 |
| ROBO | 31.93% | 9.94% | 2013-10-22 |
| ARTY(旧IRBO) | 63.16% | 15.10% | 2018-06-26 |
| ROBT | 14.90% | 7.94% | 2018-02-21 |
1年リターンの差は大きい。ARTY(63.16%)とROBO(31.93%)が大きく上昇した一方、産業用ロボットハードウェア比率の高いBOTZは9.01%にとどまった。AI半導体・コンピューティング関連の上昇相場がARTYの主要銘柄(TSMC・NVIDIA・ブロードコム)に直接反映された一方、BOTZの中核であるキーエンス・ファナック・ABBは相対的に穏やかな値動きだったためとみられる。参考までに、Global X自身が開示するBOTZのNAVベースのリターン(2026年6月30日時点)は1年16.24%、3年年率9.96%、5年年率わずか1.82%であり(Global X)、上表の8月3日時点9.01%より高い。両者とも「直近1年」を指すが基準日が1カ月以上ずれており(6月末 vs 8月3日)、この差はその間の値動きを反映したものとみられる。BOTZの3年・5年の年率リターンは他の3銘柄で同一期間の数値が確認できないため直接比較はできないが、BOTZ自身の長期トレンドが1年リターンほど強くないことは読み取れる。
5) リスク要因
- ファンド性格変更(リブランド)リスク: ARTY(旧IRBO)のように、ティッカー・指数・投資方針が丸ごと変わる事例が実際に起きている。「ロボットETF」を求めるなら、購入前に最新の組入銘柄を必ず確認すべきだ。
- 高ベータ・高集中リスク: BOTZのS&P500に対するベータは1.68(Global X、2026年7月31日時点)、ARTYは1.51(StockAnalysis、2026年8月3日時点)と市場感応度が高く、BOTZは上位3銘柄だけで資産の約29%を占める。
- テーマ重複リスク: ARTYは実質的にAI半導体ファンドに近く、既にSOXXやSMHのような半導体ETFを保有している場合、「ロボット」という名称に反して銘柄が大きく重複する可能性がある。
- 為替・地域集中リスク: BOTZの上位3銘柄は日本・スイス企業であり、米ドル建てファンドの中に円・スイスフランの為替エクスポージャーが内包されている。
- 流動性リスク: ROBTは純資産7.25億ドルと4本中最小で、スプレッドも0.20%と最も広く、頻繁な売買ではコストが積み上がりやすい。
- バリュエーションリスク: PERはBOTZ 36.58倍、ARTY 31.10倍、ROBO 29.17倍、ROBT 27.71倍と(StockAnalysis、2026年8月3日時点)4本すべてが27倍を超える高バリュエーション水準にあり、成長期待が後退すればバリュエーション調整局面に弱い可能性がある。
6) 結論 — 投資家タイプ別のまとめ
- 純粋な産業用ロボット・自動化ハードウェアへの投資: BOTZ — キーエンス・ファナック・ABBなど中核メーカーの比率が最も高い。ただし上位3銘柄の集中度(約29%)と円・スイスフラン為替エクスポージャーには注意。
- 自動化バリューチェーン全体への広範な分散: ROBO — 91銘柄、上位10銘柄比率17.59%と4本中最も分散されている。ただし経費率0.95%は最も高い。
- AI半導体・コンピューティング大型株へのエクスポージャーを求める投資家: ARTY(旧IRBO) — 1年リターン63.16%と最も高いが、実質的には「ロボットETF」ではなくAI半導体ETFに近い点を理解する必要がある。
- 最も広範なグローバル分散を求める投資家: ROBT — 121銘柄をEngager/Enabler/Enhancerの分類で幅広く分散。ただし純資産が小さく流動性の確認が必要。
FAQ
Q1. IRBOを検索しても出てこないが、償還されたのか?
償還されたわけではない。「iShares Future AI & Tech ETF(ARTY)」へティッカー・ファンド名・追跡指数がすべて変更された(StockAnalysisで確認、2026年8月3日時点 — 旧IRBOのページURLは自動的にARTYへ転送される)。旧IRBOはロボット・AI全般を対象としていたが、現在のARTYはTSMC・NVIDIA・ブロードコムなどAI半導体大型株中心の性格に変わっている。ロボットテーマを求めるなら購入前に最新の組入銘柄を確認する必要がある。
Q2. BOTZとROBOはどちらも「ロボットETF」なのに、なぜ集中度がこれほど違うのか?
指数の設計方式が異なるためだ。BOTZは時価総額加重のため、キーエンス・ABB・ファナックなど大型銘柄の比率が大きく、上位10銘柄で資産の60.19%を占める(StockAnalysis、2026年8月3日)。一方ROBOは階層加重方式で91銘柄に分散し、上位10銘柄比率は17.59%にとどまる。
Q3. ロボット・自動化テーマへの投資は、今からでは遅いか?
Global Xは、AI計算コストの低下とヒューマノイドロボットの進化を成長触媒として、ロボット市場が2035年までに約4倍に拡大するとのPrecedence Researchの予測を引用している(Global X、2025年12月)。ただしこれは運用会社自身のマーケティング資料に基づく長期予測に過ぎず、本稿で見た通りPERは27.71〜36.58倍とバリュエーション負担があり、同じ「ロボットテーマ」の4本の間でも1年リターンが9.01%から63.16%まで大きく開いている点から、銘柄・商品選びが結果を大きく左右する。
本稿は、このシリーズにおけるAI半導体・二次電池・防衛・ヘルスケアETFの回に続くものだ。次回は韓国上場のロボットETFを本稿のBOTZと直接比較する。
